賢治の生前に出版された唯一の童話集、「注文の多い料理店」(1924年)。彼の作品は読んだ事がなくとも、この題名は「聞いた事があるな」でしょう? 記念館の駐車場に隣接して建っているのが、その名もずばり「山猫軒」。 |
その時ふと後ろを見ますと、立派な一軒の西洋造りの家がありました |
『その時ふと後ろを見ますと、立派な一軒の西洋造りの家がありました。そして玄関には、「西洋料理店 山猫軒(RESTAURANT WILDCAT HOUSE)」というふだが出ていました。「どなたもどうかお入り下さい。決してご遠慮はありません」』。 |
「どなたもどうかお入り下さい。決してご遠慮はありません」 |
看板、メニュー、店内の貼り紙、箸袋、どれをとってもあの童話を連想させられ、思わずニンマリしてしまいます。「いま、WILDCATは留守です。安心してお入り下さい」と書かれた店内、メニューは「山猫すいとんセット」「山猫がゆ」「胡四王雑炊」「イーハトーブ定食」などなど。見てきたばかりの賢治を思いながら、こんな食事をするのも楽しいもの。店主さんはなかなかの商売上手とみえました。
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賢治、生前の出版物としてはもう1冊、自費出版による「心象スケッチ 春と修羅」がありますが、どちらも反響はほとんどなかったらしいのです。現在私たちが目にする作品の多さから考えると信じられないほどですが、在世中にその才能を認められなかったというと、「炎の画家」ゴッホのイメージと、どうしてもダブってしまうのです。
この連想からどうしてもオランダのゴッホ美術館に行きたくなり、10月の東欧旅行の帰りにアムステルダムまで足をのばしてしまいました。彼の心の変遷を辿るかのような年代順展示、素晴らしかったですよ。 |